手術の3日前から目薬の投与が始まる。手術当日、受付で待っていると看護婦さんがやってきて「瞳孔を開くため」と言う目薬を挿されてしばらく待つように言われる。10分ほど置いて再び目薬を挿され、3回ほど目薬を挿されてから小部屋に案内されて薄い紙製の帽子と黄色いガウンのようなものを着せられる。手術着って事だろう。

着せられた後そこの椅子に座って待つように言われ、カーテンが閉じられる。向こうのほうで機械が動作している音が聞こえてくる。今日手術が行われるのは私を含めて4人程いるようで、順番に案内されるようだ。廊下の向こうから断続的に聞こえてくるモーターの回転音やポンプのシューシュー、キューキューいうような音と何かわからないが機械の作動音なのかピッピとかポーポーと言う音も聞こえる。先生と看護婦さんが何やら話している声も聞こえる。話の内容まではわからない。…しかしこんな暗い小部屋で機械の作動音を聞かされながら待つのは結構苦痛だった。ものの4~5分だったと思うのだが「まな板の鯉」状態で刑罰を待つ罪人、といったところか。手術が失敗もしくは経過が悪くて視力を失ったら、などといらん事を考えてしまう。呼び出されるまでの時間が何時間にも感じた。
呼び出されて手術室に入ると思っていたよりは狭い部屋で、歯医者の診察椅子みたいなものに座らされた。局所麻酔とは言えベッドの様なところに寝かされるのだとばっかり思っていた。このまま座った状態で手術するのかな?と思ったら背もたれが倒された。ああ、やっぱりね。すぐに麻酔です、といって注射器みたいなものが目の前に来た時は驚いたが、流石に先端に注射針はなく、スポイト的な使い方でバシャっとばかりに液体が落ちてきた。そのあと手術する目を覆うようにして真ん中に穴が空いているカバー状のものが被された。瞼を開きっぱなしにするためのようだ。鼻の穴には「笑気麻酔」だという管を突っ込まれ、右手の人差し指にセンサーが挟まれた。麻酔が効いてきたのか視界がぼやける。水中で目を開けているような感じだが意識はそのまま。先ほど待合で聞いた機械の音と手術の器具をセットする金属音が不安を煽ってくる。目の前に強い光を放つランプが置かれ、その中の4つの光を見ているように指示される。
「始めます」の声で始まったようだが痛みは感じない。目が疲れた時に目の奥が重くなるあの感じ。それでも遠くに痛いような重い感じがする。私が反応したせいか先生が「痛いですか」と聞いてきた。大丈夫な旨を伝えて手術は進む。眼前の4つのランプがぼやけてきたように感じる。そして断続的な機械の作動音も頻繁になる。何となく痛いような気もするし、この感覚がさらに痛い方向に進んだら嫌だな、早く終わらないかなと思っていると先生が「レンズを入れます」と言ったら少し痛いような感覚があり、見えていたランプの位置が上方にズレた。おや?このままの見え方だったらイヤかも、と思っていたら視界が開いたような感じでランプの位置が真ん中に戻ってきた。その後に何やらレンズの位置を直すような感じで上下左右に移動すると、まるで水の中にいるような感じだが青っぽい視界の向こうにピントの合った天井が見えたような気がした。すぐに眼帯で視界は遮られたが、視力が戻ったような期待をさせる感覚だった。そして先生から「終了です」の声が。手術椅子が起こされて先ほどの待合室で手術着を脱がされるとそのまま受付にゆくように指示される。手術の待合に案内されてからここまで多分2~30分ほど。受付で4種類の目薬を渡され帰途につく。
何となく目がゴロゴロする違和感がある程度で痛みはそれほどない。目が疲れた時に感じる目の奥の痛みぐらい。この後麻酔が切れたら痛くなるのかな?と思ったけど、家に帰り着いた頃でもあまり変わらなかった。戻ってから横になっていたが痛みはひどくはならなかった。夜遅くなって左目の周りに重さを感じるような痛みはあったが「痛いかな?」と言った程度。目の違和感が続いていたせいかあまり眠れず翌朝目覚めた時にも昨夜感じた目と目の周りの重さを感じる痛みがあったがすぐに痛みは無くなった。
翌日は午前中に術後検診で眼帯は外す。これから3日間は洗顔、洗髪は禁止。どうしても髪を洗いたい場合は床屋さんなどに行って洗ってもらうか市販のドライシャンプーなどを使う。私は2日目に痒くて我慢ならなくなって床屋さんに行って洗ってもらった。
眼内レンズを入れた方はそれまでより少し青みがかったような色合いに感じる。ピーカンの青空の下にいるような感じ。そうでない方は黄色味がかったように感じる。どちらに軸足を置くかによって印象は変わる。

右眼は1週間後に手術。当たり前だが前回と同じ流れの手術。今回はなぜか機械の音は気にならないので不安もそれほど無い。手術が始まり、前回よりも手術中の何かやっている感は少ないように感じる。痛みが来るんじゃあないかと身構えているものの淡々と手術は進む。先生の「順調にいってますよ」という声に励まされるが一刻も早く終わって欲しいと思っている。「レンズが入ります」と言う声が聞こえて折り畳まれたレンズが挿入されるのがわかる。折り畳まれたレンズが開かれて上下左右に位置を調整され終わると麻酔のせいか薄暗く水中の中のような視界の向こうに手術室の天井が見えるのだが、ピントが合っているように感じたのは前回と一緒。そのまま眼帯を張られて手術終了。帰宅する前に駅前の100均で老眼鏡を購入。何だかイマイチ強さが分からず2.5と2.0を購入。とりあえずはこれで過ごす事にする。
光源を見ると左右に光芒が伸びる現象は手術後4日目くらいまで続いた。左目よりも少し長くかかったように感じる。
術後の視力検査では1.0と0.8と言われた。まだ安定しないようだ。安定するまでは2ヶ月くらいかかるそうだがこれ以上悪くならない事を祈るばかり。
5m先に焦点を合わせたレンズを入れているがそれでも3mくらいのところまではかろうじて見える。それよりも近いところは見えない。普通の老眼って感じなのかな?
鏡に映ったメガネ無しの素顔を2m程の距離で見るのは…コンタクトを使っていた学生の頃以来か?…鏡の中の自分にショックを受けた。…誰だ。メガネをかけていればまだ印象を誤魔化せるような気がするのでやはりメガネをかけて過ごすようにしよう。…変装したい時?には便利かも知れない。

今まで使っていたメガネのレンズを外してしばらくは乗り切ろうと思う。実際、出会った人はレンズのあるなしには気が付かず、おどけてメガネに指を通して見せると皆驚いてくれた。いずれ視力が安定したら新しいメガネを作るつもりだ。
まだ視力が安定していないし近くの物を見る時はメガネが必要とは言えそれ以外は快適なのだ。目脂もあまり気にならなくなったし。手術してよかった、と思う。










